夜間飛行

夜間飛行 (光文社古典新訳文庫)

夜間飛行 (光文社古典新訳文庫)

かつて、地上や海上移送に遅れを取らないためにあえて無理を押して行われたとされる夜間の輸送飛行が題材。これは現代の労働問題の目からすれば経営側の非情に他ならないが、人生を空のロマンに捧げたようにも見えるサン=テグジュペリの乾いた筆に載せられることで独自の詩情があることもまた認めるにやぶさかでない。際どいバランスの心理状態で読み続けることで、危険な任務に身を投じる登場人物たちに自らを重ねることができるという意味でもなかなかに印象的な中篇。思い入れの深い訳者解説がたいへん役に立った。