神話が考える

神話が考える ネットワーク社会の文化論

神話が考える ネットワーク社会の文化論

新進気鋭の哲学者によるサブカルチャー論。人々がかつて政治に、自らの行動原理を見出していたように、そのモデルが現在はサブカルチャーにあるのではないかという論旨と見受けた(正直いって具体的な作品論でない著述部分には付いていけなかったので断言できない)が、惜しむらくはその対比が足りてないゆえのグリップの弱さ。そこにはまた、あえて現在を批評的に見ようとはしないというスタンスの問題もあるかもしれない。が、それはこと彼だけに限った視点という話ではない気もする。などと言いつつも、各タームを流行の最先端にある作品上にどう乗せるかという実例集としては有益だったし、「神話を考える」と題さずに「神話が考える」とした意味、送り手と受け手はたえずフィードバックをくりかえし主体と客体を入り混ぜていくという現況の切り取り方は鮮やか。