エンディミオン(下)

エンディミオン〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)

エンディミオン〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)

主人公青年の一人称パートの効果が活きだすのはこの下巻の終盤において。心身がリンクして弱った状態のヒロインとグッと距離が縮まり、二人の関係性に陰影が付くから。シモンズはやはりロマンティストだなー。違う片側の主役を受け持つ神父大佐の、異端審問と軍事裁判が織り交ざったような異質さを醸し出す調書様式の章の巧みさや、それが心理的遠因の一つともなってのこれも急激な選択の切り替えなど規模としての派手さはないけれどきめ細かなクライマックスはなかなかの味。「ロビンソン・クルーソーの冒険」的いかだの旅と「アラジンと魔法のランプ」から抜け出てきたような旅のお供の青い肌のアンドロイド、「ターミネーター」のようにチートな戦闘力と防御力を合わせ持つ非情の女暗殺者など、時代の違う物語祖型のコラージュ作品としても完成度が高い。