オリュンポス(上)

オリュンポス 上

オリュンポス 上

なんといっても圧巻なのは、遠未来の地球で生き残った人類のコミュニティがクリーチャー大群の襲撃に見舞われる章。共同体の指導者役でもあるヒロインが留守中の夫や妊娠中のわが子に危機の最中で折々に語りかけたり、蹂躙される屋敷内で起こった過去の平和な出来事について思いを馳せるのだが、その際にも反撃の行動はたえず行われており、その取り留めの無さや要素が矛盾している思考ぶりの描写のリアルさが、非常に緊迫感を読み手に与えてくる。他にもトロイア戦争最大の英雄アキレウスが個人的な目的のためにオリュンポスに乗り込んで、出くわした工人の神ヘファイストスと共同行動に出るというエピソードも、私家版ギリシア神話の醍醐味があって面白い。なお、世界の謎はまだまだ引っ張られてこの上巻は終わっているので、完結編である下巻がいよいよ楽しみ。