昨日のように遠い日

昨日のように遠い日―少女少年小説選

昨日のように遠い日―少女少年小説選

少年少女小説傑作編…ではあるけど、どちらかといえば大人がかつての時代を思い返しながら読んだ方がより味わえるであろう作りになっている。ピンと張った真白いシーツのベッドルームの匂いを思い出すような女子寮もの(レベッカ・ブラウン『パン』)有り、政治の時代の名残りを過ぎ行く季節の感触に重ねあわすひと夏の思い出(アレクサンダル・ヘモン『島』)有り、ナンセンスが空想の映像を頭いっぱいにつめこんでいた頃を唄いだす諸篇(ダニイル・ハルムス『おとぎ話』等)有り、有名カートゥーンをパロディした思索もの(スティーヴン・ミルハウザー『猫と鼠』)有り。装丁の慎ましやかさからは意外なほど幅のあるアンソロジーでもある。付録として付けられた前世紀のアメリカ新聞漫画『眠りの国のリトル・ニモ』、『ガソリン・アレー』の前衛ぶりと完成度にもびっくり。