なぜ年を取ると時間が早く感じられるのか

なぜ年をとると時間の経つのが速くなるのか 記憶と時間の心理学

なぜ年をとると時間の経つのが速くなるのか 記憶と時間の心理学

科学的検証を積み上げて結論を導き出すというよりかは、時間感覚にまつわる興味深い事例を章ごとに紹介していき全体的な仮説を提示する体裁のエッセイ集。カレンダー計算の天才であるサヴァン症候群にあたる人々も、目隠し打ちで無双の強さを持つチェスマスターも、どうも記憶を画像として認識し処理することで常人には想像すらできない神技をこなしているらしいという予想を扱った章がモチーフ上では最も重要に思えるが、サブテーマとして記憶とは個人の体験に大きく左右される主観的なものであると提唱する章もいくつかあり、読み物としてはそちらの方が印象が強い。たとえば、ポーランドナチス収容所での罪で裁かれた元看守の裁判の顛末。あるいは、結婚直後から夫婦の片割れが亡くなるまで友人知人に送られ続けたポートレイト・クリスマスカードのコレクションがまとう淡々としているゆえに心をゆさぶる感傷。