日影丈吉選集3 吉備津の釜

日影丈吉選集 (3)

日影丈吉選集 (3)

フォークロア(民話)がテーマの第三巻。これまで読んだ中ではもっとも粒ぞろいの巻だった。特に「雨月物語」の本歌取りとも思われる表題作がぞっとするホラーで良い。事件が起こらない犯罪話。あえて迷子感覚になる効用、というのは人生の中で何度も発揮すると思う。他、圧倒的なデティールで戦国絵巻を描写した後に一文の下にあっさりひっくり返す『饅頭軍譚』もクール。虚構という名のうそ。その効用のどこか喉にひっかかる感触が、山影黒々とした田舎道にいつまでも漂うその鮮やかさ。