怖い 絵

怖い絵

怖い絵

中世のものが多いが近代や現代まで幅を取ったヨーロッパの20の名画を様々な意味の「怖さ」に焦点をあてて独自の視点で撫で斬りにしており、かなり面白い。手法や寓意、社会状況などはもちろん製作された当時を考証して解説しているわけだが、現代の一鑑賞者としてきちんと通説に異をとなえたりしている点も複数あり、咀嚼力がはっきり感じられるのが痛快。私もムンクの『思春期』には初潮の血は描かれてないと思ってたわけです。なお最もこれまでとがらりと印象を変えられたのがドガの『エトワール、又は舞台の踊り子』、ますます作者の感性の孤独な面に惹かれることとなったのがクノップフの『見捨てられた街』、女性ならではの恐れを直截に述べているのが斬新だったのはティントレット『受胎告知』、ダヴィッド『マリー・アントワネット最後の肖像』、ジョルジョーネ『老婆の肖像』。特にアントワネットには、著者に思い入れが強くあるらしく朝日のサイトで専用コーナーを担当しているとの情報も紹介欄にあって、ああベルばら世代なのだなあと。