人間狩り

人間狩り (ダーク・ファンタジー・コレクション)

人間狩り (ダーク・ファンタジー・コレクション)

同名邦訳短編集はこれまでに二冊出ているが、今回はそのうちのちくま文庫版から紙数の関係で「ゴールデン・マン」「植民地」を省いた体裁とのこと。というわけで、ディックの初・中期の短編を編んだ最新邦訳本。タイトル作品がサスペンスフルですばらしかった。ラストの一文も皮肉が効いていて痺れる。世界の終わりと始まり、か。自分と他者、希望と絶望が交じり合う混沌の果てには新しい何かがある。すべての状況はただそれだけに尽きるかもしれない。ディックの特徴である無常感にはまったく古さが感じられない。他は軽い口当たりのアイデア・ストーリーが多いけど、その中でカフカ的不条理感に満ちた『ハンギング・ストレンジャー』、テーマ的に表題作と似ている『偽者』が印象的。