名前のない花

名前のない花

名前のない花

前半はブログからの小文再録が多いのが構成上の難。いや、藤原氏の軽妙洒脱な一面が引き出されていてこれはこれで楽しいのだけど、やはりネットの大海の一部としてモニター上で眺めるのと、紙面で向き合うのとは読む側の感触にズレが生じる。そのあたりは編集上のもう一工夫があった方が良かった。後半はいつも通りの言葉本来の意味の個人主義がてらいなく、おごりなく発揮された独壇場。胸がすっとするというカタルシスともまた違う、心の風通しがよくなって背中の筋が正されるような心持ちになるね。基本的に男性的な作家パーソナリティが感じられるけど、映像的な感性を実経験からの敷衍の論理と合わせて文章を紡ぐ特性からは柔らかい女性性も感じられるところがこの人の強みだと思う。