ダイアルAを回せ

ダイアルAを回せ (KAWADE MYSTERY)

ダイアルAを回せ (KAWADE MYSTERY)

リッチーも邦訳三冊目ともなるとさすがに新鮮味が薄れる。でもそうなったらそうなったで、最後の最後にやってくるもう一ひねりをそれとなく予想しつつ確認して安心するというまったりとした楽しみ方もあるんだけど。その“もう一ひねり”の意味においては歴史考証の味わいがあり、また劇中劇にも似た趣向が付け加えられた「グリッグスビー文書」が一番鮮やかに決まっていた。他は内向的人間の願望へ共感を穏やかに示した「三階のクローゼット」、恐妻というかやり手妻の尻に敷かれる夫の姿がやけにリアルな「政治の道は殺人へ」が強めの印象。それにしても安定度の高い作家だと思う。基本、地味ではあるんだけど。