2021年1月に読んだ本まとめ

 マリーナの三十番目の恋

マリーナの三十番目の恋

マリーナの三十番目の恋

 

 80年代のソ連を舞台に、複数の男と簡単に寝るピアノ教師の美女マリーナの精神の変容が描かれる。マリーナはレズビアンだが、その心理はむしろミサンドリストに近い。その発端となった体験とその後の顛末は淡々と綴られているが、今の時代ならもっとその傷にふさわしい重みが付け加わっていたように思う。彼女の転身は唐突に訪れるが、それは免れない道筋に読者であるこちらには感じられ、父なる国家の持つ重力と個人の男女関係の不均等とをアイロニックにあぶり出したこの作品は早すぎた傑作に思う。