そこのみにて光輝く('14/監督:呉 美保)

小樽の夏を背景に、過去の事故に精神をとらわれた男と貧困の中で支えあう姉弟との交流を描く。ありふれて退屈な地方都市での逢瀬の場面はなんら憧れを催すような美化はされておらず、終盤に置かれたほとんど必然的な事件へとずるずると状況が滑りおちていくのを、無力感とともに息を殺して見つめているしかないのだが、その時にはすでに、姉弟を追い詰める側の存在の心情にさえも共感の触手が届くようになっている。そして迎えるラストシーン。字句として形をなす前に映像それ自体の力がメッセージとなってスクリーンのこちら側の胸を満たしていく。出会いが奇跡と成り得るように、物語は時に存在を照らす光そのものに変わる。描きだされること、見出されること、見つめられること、それだけで“愛”なのだと。