たんぽぽ娘

たんぽぽ娘 (奇想コレクション)

たんぽぽ娘 (奇想コレクション)

ブラッドベリと並ぶ抒情派SFの名手としてしられる作者の日本オリジナル短編集。趣向のスペクトラムが広いうえに完成度の粒が非常によく揃っていた。時空を超える恋がテーマの表題作が甘さの極とすれば、未来の宇宙戦争を舞台に自爆作戦を命令された若い兵士が到る心境を活写した『神風』は硬質な読み応え。だが、鮮やかな色彩と柔らかい質感とが全ての作品に共通する。巻末に収録された中編『ジャンヌの弓』の瑞々しさはまるで朝陽に輝く水滴のような印象。