マルコヴァルドさんの四季

マルコヴァルドさんの四季 (岩波少年文庫)

マルコヴァルドさんの四季 (岩波少年文庫)

20世紀半ばのイタリアの都会に住む子だくさんな中年労働者・マルコヴァルドさんの四季の暮らしが五度繰り返される。貧しいが家庭が常に悲壮感に包まれているというわけでもなく「棚からボタモチ」を狙ってはあてが外れる行為を繰り返すマルコヴァルドさんの懲りなさが“ですます”調で淡々と綴られる抑制の効いた児童文学だが、たとえば『毒うさぎ』というエピソードではマルコヴァルドさんに拾われ(て食べられそうにな)るうさぎが登場するのだが、医療実験に供されてすべての動物としての尊厳が奪われたうさぎの運命のゆくえにはいちおう成人である自分も思わずハラハラしたりもした。訳者あとがきに指摘されているように四季をうつろう自然の描写の美しさも見どころなので、外出のお供にちょうどいい文庫本。