ポリティコン(上・下)

ポリティコン 上

ポリティコン 上

ポリティコン 下

ポリティコン 下

新しき村」と「ヤマギシ会」を足して割ったような『唯腕村(いわんむら)』を舞台に、三代目理事長となる東一と、脱北者の手引きを行っていた母に捨てられた形の美少女・マヤとの間のむきだしの欲のもつれあいが主幹となり、村外まで巻き込む混沌とした人間模様絵巻が描かれている。ふしぎと読んでいて胸やけがしないのは、良きにしろ悪しきにしろほとんどの人物が自家撞着しながらも、世間ずれしきっていない純心さを残しているため。しかしその事自体が村の経済的な不安の予兆とも作中で扱われていて、第一部と第二部の間には10年の月日が置かれているが、清らかな理念で結ばれていたはずの村に失われたものと残ったものとの割合は、巷の類似ケースとさほどは変わらないように感じられる。理想郷を否定しつつも、それでも人は生きていけるものという結論に導かれているようで、桐野作品にしてはかなりハッピーエンドの部類に入るのではと思う。そして、同じく限界集落をテーマとしたいがらしみきおの「かむろば村へ」での〆の言葉がふたたび私の脳裏をよぎるのだ。“必ずなんとかなる。思った通りではないけども。”
かむろば村へ 4 (ビッグコミックススペシャル)

かむろば村へ 4 (ビッグコミックススペシャル)