colorful カラフル ('10/監督:原恵一)

ただ一つのメッセージがストレートに伝わる、愚直でありながら稚拙さのない映画。原監督が日本映画界の重鎮といわれ続ける小津安二郎の後継者とする意見に、これまでになく強く共感できる作品でもある。退屈すれすれのシンプルな趣向で作られており、そこにあるのは保守のような前衛。都会の駅前の商業色ばかり目立つ薄汚れた情景やコンビニの前で座り込んであまりにも簡便に買い食いする少年たちを、懐古主義からの断罪をこれっぽちもなく、さりとて美化もせずに描き出す演出は、淡白なようでいて実は強いテーマの裏打ちが透けて見える。現実を現実としてありのままに受け止め、とりあえずの肯定で絆を繋ぎ止めようとする働き。それが掛け替えのない難しさであるからこそ、主人公の父や兄は食卓を囲みながらも泣き崩れる母の内面に容易に踏み込んだりはせずに、ただその場に居続けて彼女の手料理を食べる。凄まじいけれど妙にほの温かい1カット。同様に、クライマックスシーンで妙に視線を誘導されるのはカセットコンロの鍋によって結露した食器棚のガラス戸。その過剰なまでの緻密なリアルさに、私たちは思い出すことになる。息を詰めて会話の核を待ち受けていた在ったかもしれない…いや必ず在った記憶の中の家族の情景を。