跳躍者の時空

跳躍者の時空 (奇想コレクション)

跳躍者の時空 (奇想コレクション)

ライバーの著作は「ファファード&グレイ・マウザー」シリーズを半巻読んだのみ。その際にはうっすら感じていながらも建設的に読み込めなかったけど、演劇家族に育ったというライバーのライトモチーフは“日常は魔法に満ちている”ということ。愛猫たちは次元を超えるし、めがねの美少女は忽然と部屋にあらわれるし、偉大なる戯作者は危機の劇団に奇跡をもたらす。奇想の大胆さと比しての日常パートの地味さと、一見して起伏に欠ける語り口が噛みごたえのある味わいを生み出すライバー作品の読み方を教えてくれたこの短編集には感謝したい。それにしても愛らしい表装画。この大仰なSFぶりを連想させる表題に変更させたという当時の編集者の慧眼ともども、ライバーの風変わりなマッチング手法にはふさわしい。