青い文学シリーズ「こころ」

原作の追想章(老成して「お嬢さん」と穏やかに暮らす「先生」が主人公の青年にあてた手紙という内容)のみを抽出し、なおかつ「先生」と「K」それぞれの「お嬢さん」像を軸として対照し同じ時間軸に身を置きながらも違う心象風景をつむぎだす孤独さの由来を演出した前後編構成。面白いのは、出来事が同一しながらも「先生」と「K」の記憶の中では季節が正反対なこと。これは過去が実はあやふやで個人の創作ですらありうるという実在性の大胆な解釈。しかし、ものそい奔放な「お嬢さん」。漱石が寝込みそうなほど(笑) …あるいはKの禁欲主義が生み出した全てが妄想というタネ… 単純すぎてつまらんけどね。