きのうの世界

きのうの世界

きのうの世界

思い当たる理由もなく突然に失踪した会社員が最後の時を過ごした町。そこには三本の塔が建つ広場とぐるりを巡る水路とがあった。…三人称の対象がそれぞれ変わる各章によって順繰りに綴られる「彼」が死んだ訳。そこになんら悪意がみつからないという点においてミステリー小説としてなかなか新鮮かも。あと、やはり恩田陸は東京よりも地方を描写する筆力がすばらしい。人がいるでもなくいないでもない人口密度の共同体の雰囲気が空気として伝わってくるようだ。