蒲公英草紙

蒲公英草紙 常野物語 (常野物語)

蒲公英草紙 常野物語 (常野物語)

シリーズ「常野物語」の二冊目にあたる長編。日中戦争前夜の東北のとある里村を舞台としているだけに時代小説の手触りが上品で味わい深い。モチーフ的には山窩を思わせる流浪の民「常野」は、社会を包含する役目を負うゆえに大衆から距離を置かざるを得ないこともままある“作家”の暗喩に思えたりもする。…ところで終盤はベタながら情感に畳み掛ける記述ぶりにどうにも泣けてきて困った。