新進気鋭の奇術師二人の十年に及ぶ確執を、芸能に取り憑かれた人間の業を絡めて描く。無駄なシーンがまったくないきれいな構成(たとえば主人公二人の小道具としての鳥への姿勢の前半の違いが後半への変貌の前説となっている点)の作品で、強いていえばクライマックスのネタとして用いられるSF色(原作が
クリストファー・プリーストだからね)がやや唐突に感じられるものの、
ニコラ・テスラという実在した奇/天才のネームヴァリューを媒介することで和らげる配慮もある。それにしても終盤近くのドンデン返しに次ぐドンデン返しは静かな圧巻。もう何が何だかという域ではあるけど、おそらくはそれも意図的なもので、たぶんもう一つのテーマとして個人の
アイデンティティの不確かさというものが底調に流れているんだろうなとはプリースト小説を読んだことがあるのでうっすら目測がついた。あと
スカーレット・ヨハンソンはまさしくブロンドかわいこちゃんのアイコンそのものな女優だなーとか。