ほら話とほんとうの話、ほんの十ほど

ほら話とほんとうの話、ほんの十ほど

ほら話とほんとうの話、ほんの十ほど

アラスター・グレイミヒャエル・エンデと作品構造がやはり似ているなと思ったのがまず第一。この短編集は挿絵がふんだんに盛り込まれているということも含めてエンデの「鏡のなかの鏡」と印象がよく似ている。違いは、イラストを描いたのがグレイ本人かエンデの実父かという点。それでも、エンデの作風がグレイに負けないほどに視覚イメージが豊かであるという事が分かったりもした。グレイ本人に関しては、「哀れなるものたち」でも見当が付くように社会主義者の一面を持つこと(その色合いが濃い『運転手のそばに』は本書中一番好きだ。爆発の瞬間のまばゆさを描写するのがなぜこんなに上手いんだろう)、それと「ラナーク」の自伝的部分からも感じ取れたように少年期に大人の理解者に恵まれた(『ミスター・ミークル』より)ことで才能を伸ばせたという点があらたに理解できた。