警士の剣 (新しい太陽の書 3)

警士の剣(新装版 新しい太陽の書3) (ハヤカワ文庫SF)

警士の剣(新装版 新しい太陽の書3) (ハヤカワ文庫SF)

表紙絵いいですね。セヴェリアンが憂い顔なのが内容と呼応しているように感じるし、二体の白骨をセヴェが救おうとして救いきれなかった二人の愛人・セクラとドルカスと見立てると感傷性がいや増す(まあ普通に解釈すれば本巻登場の双頭人のイメージなんだろうけど)。さて拷問人一匹コマし旅(今回撃墜星追加された内訳は有閑熟女とほっそりラバさん)はまだまだ続く。前半は愛し合うふたりがそれぞれのアイデンティティを捨てられないために別れることになる葛藤ドラマ(ドルカスがもういじらしすぎて…名台詞続出。引き比べてセヴェリアンの自己擁護のくだくだしさが卑近すぎて笑えてくる。挙句のはてに“ここで押し倒したら怒られるかなあ”とかもう。おまえは10代男子か)、後半は民衆の敵との闘い二種。趣は異なるものの、どちらもセヴェリアンが英雄然としたメンタリティではおらず、相変わらず拷問者ギルド出身というプロフィールに頑としてこだわりつつ、据え膳食ったりぬらりくらりと恐喝をかわしたりと運命や状況に流されている印象。それでも、本巻の最後では愛剣と引き換えに原住種族を解放するという大きな仕事を成し遂げたようだけど。…でもこれからテルミヌス・エストなしで身を護れるのかな? ところで徐々に色濃くなっていくSF色はファンタジー世界観との混交技法ということで意義は分かるんだけど、神話や聖書エピソードがごっちゃ混ぜになった劇中物語が何度も差し挟まるのは、本編の内容とさほど呼応しているようには思えないのでよく分からない。時代の経過がそれだけ長大だという示しでしかないのだろうか。それは置いといても、まるでフランケンシュタインの怪物が自分自身を調整するためにフランケンシュタイン博士を生み出すというような倒置はなかなかに魅惑的だけど。科学技術跳躍への反動として自然に帰った獣化人の設定しかり。