限りなき夏

限りなき夏 (未来の文学)

限りなき夏 (未来の文学)

ハリウッド映画「プレステージ」原作者による短編を日本独自で編んだもの。馴染みのない作家だったので、かなり戸惑った読後感だった。SF設定やファンタジー的世界観を屋台骨としつつも、あまりにも一般小説の語り口を淡々と採用している作風だから。個人的には、残念ながらいまひとつ肌に合わなかった。上品すぎる文体や構成だというか、グルーヴ感とは縁が薄いように感じたためかと思われる。いや、単にテーマ性に興味がなさそうな点に尽きるのかもな。ただ、長編をひとつは読んでみたいなと思わされる味わいはある事は理解できた。収録全8編中、叙述ミステリのサプライズがある『奇跡の石塚』(これのラストセンテンスは旅のアバンチュールものとしてすごく好きだ)とSFガジェットにいつの世も変わらぬ人間精神の不確定さを絡めた『リアルタイム・ワールド』が面白かったです。