蒸気駆動の少年

蒸気駆動の少年 [奇想コレクション]

蒸気駆動の少年 [奇想コレクション]

ユーモアナンセンス(個人的にはスラデックのこの面が好き)、クラシックな雰囲気の推理もの、有名SFのパロディ、マニュアル文体の不条理さを活かしたシュール技(実際に説明書執筆に携わっていた経験があるとのこと)といった本当に様々なジャンルが詰め込まれたいわば“スラデック博物誌”といった趣に仕上がっており、ギリギリのラインでまとまりのない読後感から編集意図が掬えている次第。印象が特に強かったのは支離滅裂な筋運びが不思議に叙情を醸す『古カスタードの秘密』、笑える西部劇風刺『ホワイトハット』、とにかくあっけらかんと性悪説が徹底して描写されるゆえに作者のドライな姿勢がかえって嫌味もてらいも無く伝わってくる『血とショウガパン』、長距離バス旅行のやるせないような味気なさは万国共通なんだなと思わされる『高速道路』あたりが。