浮世絵史概説 フェノロサ厳選20木版画による浮世絵史観

浮世絵史概説―フェノロサ厳選20木版画による浮世絵史観

浮世絵史概説―フェノロサ厳選20木版画による浮世絵史観


日本美術の紹介者として有名なアメリカ人学者が欧米文化人に向けて執筆した明治時代の書の再刊本。概説書にありがちなように、前説が長い割には後尾へいくほど駆け足の紹介ぶりとなり、また馴染みのない層へと強くアピールせんとするあまりに主観記述が勝りすぎてる箇所もいくつかある…のはまあ当時の出版事情の現在と比較しての大らかさみたいなものか。軸として取り上げた名品20枚の中でも、特に四人ほどを浮世絵史の革新者として紹介しているのだけど、背景ベタ摺りなど空間処理をデザイン上で積極的に開拓した鈴木春信の章が最も印象に残った。ただ、個人的に好きな幕末期の絵師たちがすっぱり割愛されているのは残念。フェノロサの美的センスはあの時代の作品を許容していないのかもしれない。ともあれ、数多く名を残した絵師たち-しかも襲名していたり兄弟弟子で名前が酷似していたりで判別がややこしい-への基礎知識を付ける足がかりとしては、読んで損はなかったなと思ってます。