太陽('05/ロシア)

芸映画の有名監督であるソクーロフの別作品は「エルミタージュ幻想」以外観たことがないので正しい批評なんてできないけど、とりあえず本作は日本ではやり辛い天皇コントにイッセー尾形侍従長役の佐野史郎と皇后役の桃井かおりを従えて挑戦してるとしかみえなかったとゆー。チョコレートのくだりなんて面白すぎる。思うんだけど、日本語で演じさせない方がよかったんでは。日本人の目からしたらイッセー尾形イッセー尾形であり、それ以外の人物にはみえない。でもまあ生身の人間でありながら国家の象徴でもあるという難儀さに品良く寄り添う表現の手管は、けっこう共感できるものがありました。最も昭和天皇の個人性が演出できていたのは、東京大空襲の様子を想像しているカット。威嚇さながらに低空を飛ぶB29が、自身の研究対象であった海洋生物(ムツゴロウ?)の姿形と溶け合った奇妙なイメージ。それとリアルに燃え盛る街の様子というシュールな組み合わせは、庶民と隔絶されながらも無関心でいることを許されない天皇という存在における堪えざる焦燥の効果的かつ端的な表現だったなと。