ひこばえ

ひこばえ (日影丈吉選集)

ひこばえ (日影丈吉選集)

50年代から60年代にかけて、雑誌読物として著された探偵小説が風俗的にも娯楽的にも肩が凝らず面白い。たぶん日影丈吉の黄金期はここ。でも媒体の対象が明確なだけに、女性や動物が現代よりもずっと“他者”として扱われてるのか微妙に痛し痒し。まあ考証的には興味深いんだけど。それはさておき不可思議な惨殺体をめぐる推理譚「眠り草は何を夢みる」の結部がとりわけ不気味に冴えてていいですね。大戦中(直前だったかも)の台湾が舞台の「ねずみ」も博物誌的でいいしサクサクと出し惜しみない展開で粘ついた女の嫉妬の世界が語られる「爆発」も良かった。