「東京喰種」全12話視聴完了

原作のうちの区切りのいいところまで進むにしても尺が足りなさ過ぎる、ないしは切りのいいところがテーマ的に見つけることが難しいという1クールものによくある問題点を逆手に取ったかのように、最終話では主人公の内面の動きを描くことのみに構成されたという潔さ。仲間の様子や状況説明が入らないためにぶつ切り感は避けられないが、主題歌をBGMとした事や殺陣アニメートのダイナミクスで心理の流れを援護する演出の狙いは精確で、悪手になりそうなところをアクロバティックに回避していたのには感心してしまった。ヒトの形をした者が人を喰わなければ生きられない摂理のために生まれる敵意の連鎖というテーマの中で日常の穏やかさや仲間の繋がりを描いたアットホームさにはやけに和まされたり、娯楽作品として成立させるための細心さがシリーズを通して感じられる。倫理の終わりの見えない相対化を最後まで貫いた脚本も芯が通っていた。

ピース

ピース

ピース

アメリカの一地方で財をなした男の、末期の回想。時代風俗小説のようでいて、ところどころで幻想的なエピソードが混じり込む。平穏で順風満帆であるかのような回顧録の水面下でいかな混沌が渦巻いているのか。これはやはりジャンル色の濃い幻想文学と呼ぶより、一般文学とした方が精確ではないだろうか。人間の行いの複雑さは、時に本人の自意識にすら認識しきれなくなる。それすらも含めて“平和”と名づけられた状態があるのならば、人間において魂の平安は真にありうるのだろうか。