ピース

ピース

ピース

アメリカの一地方で財をなした男の、末期の回想。時代風俗小説のようでいて、ところどころで幻想的なエピソードが混じり込む。平穏で順風満帆であるかのような回顧録の水面下でいかな混沌が渦巻いているのか。これはやはりジャンル色の濃い幻想文学と呼ぶより、一般文学とした方が精確ではないだろうか。人間の行いの複雑さは、時に本人の自意識にすら認識しきれなくなる。それすらも含めて“平和”と名づけられた状態があるのならば、人間において魂の平安は真にありうるのだろうか。