2022年3月に読んだ本

ゴーイング・ダーク

巧妙化が進むインターネット上の極右の動きに対抗するために、国家とも繋がりの深いシンクタンクに所属する若き女性である著者が時には自ら対象団体に潜入してその実態を探る。現在の過激主義組織のネット活動の手口とその目指す方向が分かりやすくまとめられたノンフィクション。しかし著者同様に暗澹たる気持ちと絶え間ない混乱とにさらされるのは、今でもそしてこれからも、現状体制へのゲリラ戦として自らの身元や目的を隠した種々様々で物量多数のネット工作が厳として実在している現実を直視せざるを得ないからだ。どうしてこうなったインターネット2.0。しかし本書はただ絶望して手をこまねく態度だけにとどまっているわけではない。フェイクニュースへの訂正や指摘など、心ある人々のボランティアによってインターネットの良心は完全に駆逐されずに済むかもしれないといったいくつかの具体策も結尾には提示されている。とはいえ、またしても暗い気持ちになるのは、インターネット過激主義に関わる若者たちがたいがいの場合は感じがよい普通の人々として描かれていること。そしてその発言や思考に、少なからず共感してしまう部分が自分に無きにしも非ずという点。