青猫について(全2巻)

焼け跡の悪党どもの跳梁跋扈劇。復讐に身をこがずヒロインもまた、物語後半では人の肉を斬り骨を絶つ至高の快感を自覚せざるを得ない展開となる。そこでは、戦争は単なるきっかけにすぎず、人間の本質はいまだケモノであるとする冷徹で澄んだ、それゆえにユーモラスな空気がたゆたう。作者が初期作から垣間見せていた独自の人間観を全開して描ききった快作。みんなも人を斬りに斬りまくったあげく、夜這いした姪に返り討ちにされたうえ豚小屋に身を投げて死のう!…それも一つの人生です。