『氷』三部作

ブロの道: 氷三部作1 (氷三部作 1)

ブロの道: 氷三部作1 (氷三部作 1)

氷: 氷三部作2 (氷三部作 2)

氷: 氷三部作2 (氷三部作 2)

23000: 氷三部作3 (氷三部作 3)

23000: 氷三部作3 (氷三部作 3)

ロシア革命の時代、ツングースカ大爆発の調査に訪れたある青年に強烈な啓示が訪れる。自分たちは宇宙から到来した純粋なエネルギー体の"光"の仮の姿であり、無意味な暴力の惨劇があふれる世界を原初の『無』へと戻さねばならないと。一世紀に及ぶ、二万三千人の仲間たちを集めるカルト集団の戦いがそこから始まった。
20世紀の混乱のあとに訪れる21世紀の無気力でよりありふれた荒廃。どちらも客観的にみれば(地獄だな)と思わざるを得ず、淡々としたソローキンの描写には、単なる新興宗教-『兄弟団』はグローバルに強大な影響力を持つものの、オカルト能力についてはぎりぎり主観の範囲にとどまっているとも解釈できる-糾弾を超えた、人々の絶望の集積への鋭い考察が伺える。ヒトラーをより多く集団自殺に巻き込もうとした首謀者と捉えるブロのモノローグの箇所がその一例。人類の悲しみはやがて世界の存続の否定へと向かうのか? 結末までボリューム豊かなシーンの連続と鮮やかなカットの切り替えしで読んでいて飽きることがなかった。