残酷な神が支配する(全10巻)

読もう読もうと思っていた名作を、電子書籍の冒頭巻無料キャンペーンがきっかけでついに機会を得た。児童性虐待がテーマだが、加害者の死亡後の展開の方が長く、物語は序々に愛と呪いの近似性と境界性の薄さをも包括していく。虐待サバイバーの回復したとみえてすぐにゆり戻しがくる心理を外から見守る重圧感をたっぷりと見せつつ、しかし全体の色を決めているのは、単なる社会問題提示にとどまらずに恋愛の重層性でもって人間の尊厳を綾なす作者の美意識。その姿勢に圧倒され通しで読み終えた。