奥の部屋

奥の部屋: ロバート・エイクマン短篇集 (ちくま文庫)

奥の部屋: ロバート・エイクマン短篇集 (ちくま文庫)

ホラー・ストーリーと一味違うストレンジ・ストーリーの数々で編まれた邦訳オリジナル。その中でも比較的オチが明確に付いている「待合室」と表題作がやはりイメージとして残りやすい。しかし「恍惚」の慣れない旅先での見知らぬ家への訪問の何が起こるでもないただ単に気味の悪い落ち着きなさ等もそれと劣らず鮮烈とも言えて、いつも人の精神は思っていたよりも移ろいやすく動きやすいものなのだと、その地味な真実がつきつめれば最も怖いのかもしれないと考えが至る。他にあまりない読後感の作家である。