ベルファスト71('14/イギリス 監督:ヤン・ドマンジュ)

イギリス軍の新兵が民族運動の火種がくすぶるアイルランドの街へと派遣される。ただの警戒任務だったはずが高まりゆく人々の昂奮の中、一人だけ隊から切り離されてしまう主人公。そこから彼の一晩の地獄行が始まるのだが、危機の訪れ方、その瞬間のタイミングがとにかくリアルでまさに全編にわたって目が離せない。それでいて、臨場感の出し方が誇張がなくひどく自然なのだ。アイルランドの人々が名もない愚かな群衆ではなく、地元の雰囲気が荒れていく中で苦悩し流される個々として描かれているのが何より見事で、ひとたび現実で集団性ヒロイックに酔う勢いが生まれると、いかに簡単に戦場が生み出されてしまうかについて、これほどシビアに考えさせられる映画もちょっとない。それは、救いも嘆きもなく淡々と示される、ラストでの主人公の精神の変化で真骨頂となる。