神々のたそがれ('13 ロシア/監督:アレクセイ・ゲルマン)

文明が800年遅れた惑星へと地球からの調査団が降り立つ。そこで神のように崇められるドン・ルマータであったが、彼にも惑星の住民たちの集団的な蛮行を止めることはできず、ただそのるつぼへと流されていくだけであった。
モノクロ映像で淡々と描かれていく汚濁と恥辱の地獄絵図。ヒエロニムス・ボスの作品の中に投げ入れられたようで、中世の人々はこんな気持ちで生きていたのかなと、なぜか観ているだけの自分まで諦観に包まれる。嘲りを込めたカメラ目線を頻繁に送ってくる登場人物たちからもその無力感は募っていく。そんな中でときおりよぎる白い物たち。バラ、鳥、雪。それらが画面をほんの少し清めていき、同時にこちらの気持ちもほんの少し救われる。そして、また汚泥にすべてが包まれて無意味な狂乱の足跡にあらゆるものが蹂躙される。その繰り返し。それだけ。それだけである。人々はみな汚れ醜く、出来事に条理は見出せない。しかし“神”はそこから逃げ出さず、人はただ生を続け繋げていく。意味を超えた世界を見せつけられた三時間、決して無駄ではなかった。