ヘイトスピーチ 表現の自由はどこまで認められるか

ヘイトスピーチ 表現の自由はどこまで認められるか

ヘイトスピーチ 表現の自由はどこまで認められるか

アメリカやドイツ、イギリスといった先進国におけるここ半世紀の人種差別言説への対応の変遷を比較した考察書。直接的な暴力を伴わない場合、特定の集団への攻撃的なスピーチはどこまで許すべきかについては、各国の人権に関しての歴史の歩みからくる抑制力と慎重性との兼ね合いがそれぞれに量られていることが読んでいて理解できた。特に興味深かったのは、人種混淆が最も激しいはずのアメリカでヘイト犯罪の予防措置としての法律をつくることに後ろ手にみえる箇所で、これはかつての公民権運動が影響していると説明があってようやく合点がいった。表立った人種や民族にまつわる衝突が、第二次世界大戦以来なかった日本では、議論はまだまだこれからなのだなと思う。