TIGER&BUNNY The Rising('13/監督:米たにヨシトモ)

テレビシリーズの再構築版だった前劇場版から趣を異にして、直接の続編となり同時に完全新作でもあるエピソード。謎の組織ウロボロスの解明やアンチヒーローであるルナティックの処遇などは置かれたままになっているので、完結編ではないのは、やや肩透かしでもあり、今後の作品展開に期待が残る意味では正解に感じた部分もある。
内容への印象としては、まず主人公である虎徹が容赦なく“過去の人”つまり第二線以下の能力しかない人物として扱われている点がなにより特徴的。彼が企業からヒーロー戦力外通告を受けて、タクシー運転手に転身するなどアニメの主人公としての物語特権性はどこいったの?!と内心動転すらする。
とはいえ物語の大筋として、シュテルンビルトに伝わる伝承をなぞり破壊行為を行うテロ集団というミステリー要素の縦軸がテンポよく展開するため、キャラクターたちの内面描写がシビアな割に胃にもたれる感じがない。テレビシリーズからのファンへのサービスと、それからは独立した劇場プログラムとしてのスペクタクルとの兼ね合いはかなり卒なくこなしている。キャラクターデザインはテレビシリーズより写実的というか肉感性を増していて、それがメインキャラの苦悩の面に説得力を増しているし、髪型を変えている割合が多いのも、現実と同じように流れる時間という不可逆性を濃く感じて、なにやら感慨深いものがあった。変わりゆくものに抵抗もせず降伏もしないという人柄を持つ虎徹が、やはりこの物語の主人公なのだと自然に納得させる収束ぶりになっている。