危険なメソッド('11/監督:デヴィッド・クローネンバーグ)

新進心理学者時代のユングとその美しい女性患者、彼らを危うく見守る精神分析の大家フロイト三者を中心にして第一次大戦前の不安な時代を風光明媚な自然と精緻なセット美術で描く。プロットの淡さがかえって背景や演技者の美しさを引き立てていて短めの上映時間ながら満足度は高かった。情念に突き動かされて医師モラルに抵触するユング像という斬新さに加えて、女性患者ザビーナ役のキーラ・ナイトレイの迫真の演技ぶりとが、当時のヨーロッパの先が見えない空気を映しており、最後にクレジットで示された三者それぞれの晩年がいつまでも脳裏に余韻するようだった。