作品名は、
ピンホールカメラと同じ役割を果たす、原始的な投影機に付けられた
ラテン語由来の言葉で『薄暗い部屋』という意味(訳者後記より)。娘ほどの齢のはすっぱ少女にふとしたはずみで熱を上げた主人公の温厚な紳士の、一瞬にして反転した世界を示していると思われる。"中年男が熱狂する
少女愛"というあらすじはかの「ロリータ」と同じだが、表現手法の簡明ぶりや美少女の年齢がやや上な点はより一般向け。
ナボコフ作品にいまだ馴染みが薄い自分にも、通俗小説として楽しめた。あくまで軽妙な雰囲気で進むので、登場人物の誰にも必要以上の嫌悪感を抱かずに済む(主人公を良い様に翻弄する育ちの悪いヒロインは基本、憎まれ役として描かれるのだが、初めて出演した映画での自分の女優としての凡庸さにひどく落胆するくだりなんかは妙に感情移入してしまったりする)のも読みやすかった。