「SHERLOCK」第一シーズン(全3話)

偏屈者で変人、それゆえに不思議なカリスマ性とずば抜けた推理力を持つ …という基本設定を現代に移しかえると、なるほどホームズは発達障害を持つゆえに突出した注意力と五感と直観(主に電子機器の読み取りで発揮されているのがアイデアとして秀逸)キャラクターと見受けられる。そこでは、ホームズは自覚しないままに孤独の中にあるようでもあり。また、母や兄といった家族との関係もぎくしゃくしているようだ。様々な社会的境界が形を崩しつつあるようにみえる現代で、ホームズはしかし案外にもより自分自身の中の檻にとらわれているようでもある。第1話、抵抗ももはやまったく出来ない容疑者の上腕をふみつけて欲しい情報を引き出そうとする姿には、視ていて嫌悪感すら抱いた。その後のあっけらかんとしたワトソンとの共犯関係成立を示す会話シーンでも、演出がやけに軽い。なかなかにタイトで挑戦的なコンセプトの新シャーロック・ホームズ。手放しで魅せられたわけではないけど、主演のベネディクト・カンバーパッチの個性と今後のホームズ・ワトソン組の精神の変遷には興味を十分引かれる。