宮沢賢治への旅

グラビア文庫という風情の体裁で、半日もあれは読み終えることが出来る。紀行文あり、青春時代に賢治に傾倒していたころの懐古エッセイあり、コミカライズの掲載ありで、複数の角度から乱反射する賢治作品の持つ光を感じる趣向はなかなかに乙。特によかったのは賢治の短い東京時代を地理的に追った畑山博によるルポ文と、巻末付録的なブックガイド。賢治は改稿を重ねるタイプであったため同じ『銀河鉄道の夜』の文庫版でも、出版社によって採用した稿が異なることや、知人へ出された手紙文を読むにはどの全集をあたればよいかなと、詳細かつコンパクトにまとめられている書誌ぶりがすばらしい。