「へうげもの」全39話視聴完了

原作の最大の特徴であり見所である、劇画バロックとでも言うような極端なパース表現がスポイルされていたのは既読者として物足りなさを感じないでもなかったが、静的に抑えた中で、色彩や光線にも人の心情や場の空気を語らせる演出の一貫性は確かなものであり、各回の出来に波が出ないようにした制作コントロールぶりは作画の端整さが崩れなかったことからも明確だった。いわば、真下耕一監督と原作者との関係は、劇中における千利休古田織部のそれとも重なる和気藹々とする中に美学の丁々発止が生まれるこころよき緊張感のあるものと作品からは立ち上がり、千利休が弟子たちに伝えようとした茶席におけるもてなしの心も確かにそこに在ったということなのだろう。よきお手前でした。