セゾン文化は何を夢見た

セゾン文化は何を夢みた

セゾン文化は何を夢みた

セゾン文化は日本経済の停滞と歩を同じくしてその役目を終えてしまった…らしいというぐらいの時代認識はボンヤリと東京に住んだことのない自分でも持っていたが、一時期のセゾングループ社員でもあった永江 朗が店舗それぞれのキーパーソンへのインタビューに自らの回顧を交えて構成されたこの書を読み終えて、自分がかつて夢見た東京文化こそここにあったのだと改めて認識するとともに、そのディテールを偲ばせる材料をもらえた事に感謝に似た気持ちを抱いた。ここにあるのは包括的かつ横断的なカルチャースタイルを一度は形作りながらも、結局は大衆文化の土台と固まるまではたどり着けなかった夢の墓標かもしれない。だが、すべては終わったとするのも早計なのではないか? -- セゾングループ代表であった堤 清二への取材の章に向かって序々に空気密度を高めてゆくその計算高い章構成を読み終えてから感じ取る時、それでも東京になにかしら「在る」と思い続けていたい自分などは、そう考えてしまうのだ。