ちょっと繊細巧緻すぎてこちらの読解力が付いていかないものも一つか二つあり、あらためて
池澤夏樹のカヴァー範囲の広さと感性の豊かさに恐れ入ってしまった。と、同時に個人編集を謳ったシリーズの銘は伊達ではないなと。相当な分量のアンソロ
ジーで、すでに日本でもよく紹介されている作者の代表短編もあれば、ほとんど知られていない著者の作品もありで、セレクトバランスの良さにより、全体を読み終わってみれば現代の文学を俯瞰できたような気分になるのも確か。印象に特に残ったのは、素朴な教訓譚のスタイルを採る『ギンプルのてんねん』(バシェヴィス)、現代先進国の混濁し弛緩した空気を切り取ってみせるこれも割とシンプルなつくりであった『
ランサローテ』(
ウエルベック)。あと、バラードはよくわかんねえなでもイメージはめちゃくちゃ鮮烈…という意味で『希望の海、復讐の帆』も追加…