告白('10/監督:中島哲也)

事前情報ほぼなしで行った事とはあまり関係なく、最初から最後まで作中世界にのめりこんだ観賞となった。独白の中心視点となる人物は複数であるものの、行きつ戻りつする時間軸の動きは、まるで戻れない過去(そういえば劇中でも頻発していたのは針が逆にすすむ目覚まし時計の映像)の決定的瞬間を共有するあまりに、精神が同化してしまい、ひとつの汚濁の色に固まった心たちが投影するスクリーンのようだ。感情の分かち合いが、傷つけあいでしか為されない現代の絶望に寄り添いきった、おそるべき映画だった。「リング」以来のジャパニーズ・ホラー決定版とさえ言える。その怪異は日常空間にあるからこそより恐ろしい。自分がもっとも心の澱をかき乱されたのは、クラスの中心的人物である女子生徒が委員長の美月を「感情がないの」となじるシーン。作中一貫して描かれる価値の転倒がもっとも端的にほとばしった瞬間。コメディ映画のようにリズムとテンポに身をゆだねさせるカットと、家庭内の緊張がふいに噴出して声変わり直前の少年の絶叫がこだまするサスペンスフルな展開が織り交ぜられる時、監督自身の「告白」がすべての行間からたちのぼってくる。…なーんてね。