憑かれた鏡

憑かれた鏡 エドワード・ゴーリーが愛する12の怪談

憑かれた鏡 エドワード・ゴーリーが愛する12の怪談

選者は絵本作家のエドワード・ゴーリー(巻末解説によればトーベ・ヤンソンの短編に彼と本書をモチーフにした作品があるそうで、なるほど両者のペンタッチには共通点がある)。12編の怪談に、それぞれゴーリー自身の挿絵が付けられている趣向が実に端整。本編の中で特に自分好みだったのは、ブラックウッドの古典的幽霊屋敷もの『空家』。実況性にヒヤリとさせられる。どことなくブラッドベリの短編を思い出したハーヴィ『八月の炎暑』の予感と余韻あふれる文体も印象的。どれも、構成としてほとんど立体的に美しいというか、語り口に精魂傾ける怪談のセオリーがきっちりと踏襲された手堅い作品ばかりで、さすがにイラストレーターによる審美眼だと。