崖の上のポニョ('08/監督:宮崎 駿)

一番不気味というか違和感を持ったのがポニョが赤子の顔をのぞきこむ、無BGMの尺の長さ。双方まるで別惑星の生き物同士のようなどちらに倒れこむかわからないファーストコンタクト。でもまあポニョは結局、自分自身でスープも消化できないままに生まれてくるというニンゲンの根源的なもろさを受け入れるということを、赤子の泣き顔に強く接吻することで示すんだけど。その直前の母親が渡されたサンドイッチを取り落とすシーンにも何か不安なものを感じた。ストーリー性の薄さは「となりのトトロ」も同じなんだけど、あの頃よりもカントクは大衆の感性を信じられなくなってるのかなあとか、やたら運転の荒い母親の姿に思いました。うん、別に他の人に危険を与えない分には、どんだけ飛ばしても嵐の中強行しても余所見しても構わんと思うよ。ストレート・メッセージではなく寓話でしか伝えられないものにチャレンジしたかったということなんじゃないでしょうか。そういうわけで細かな解釈は一切気にならずに、ただただ至福のエフェクトアニメーションとアンバランスすれすれな鮮やかで賑やかな色彩設計(子供の物理的ににごりない眼では夏はきっとああ見える)を楽しんだのでした。しかしポニョ母、そっくりな気色悪いクリーチャーが「新しい太陽の書」に出てたよ…